秋

天国のかこさんからの贈おくり物  

　かこさんは秋が大好きでした。ところがとてもきらいになったときがありました。

　昭和19年、日本がアメリカと激はげしい戦争をしていた高校２年生のとき。煙けむりをふいて落ちる日本の飛行機から飛び出した飛行士が、かこさんたちの目の前を、恐おそろしい勢いで落ちてゆくのです。からまった落下傘らっかさんのひもをほどこうと、必死に手を動かしているのが、下からはっきり見えました。「落下傘らっかさんが開かないんだ。落ちる、落ちる、落ちてしまう！」

　この絵本は、太平洋戦争中にかこさんが体験した実話です。かこさんが亡なくなってから娘むすめさんが、「戦争」をテーマに制作された紙芝居かみしばい「秋」を発見し、３０年がかりで絵本として世に出そうとしたことを初めて知りました。　

　平和を願う、かこさんの強い思いが込こめられています。こどもの未来を考えるすべての皆みなさんに、天国のかこさんからの贈おくり物‼

2021年11月5日（安藤厚子あんどうあつこ)