幸運をもたらすミスターP
「もうがまんできないから」ぼくが家からとびだした時、げんかんに立っていたのは大きなシロクマ。持ってたスーツケースにはなぜかぼくの住所が書いてあった。
シロクマの名前は「ミスターP」。その日から、ぼくの家でくらすことになった。弟リアムには障がいがあって、お父さんもお母さんもリアムのことばかり大事にしている。取り残されたような気持ちのぼくをミスターPはぎゅうっとだきしめてくれた。ふかふかしてあったかい体につつまれているとしあわせ。
ミスターPはおもしろいやつだ。いっしょにスクールバスに乗り音楽をきき、サッカーの応援ダンスもおどる。ミスターPがいるとたいていのことがうまくいく。ぼくと弟も。幸運をもたらすミスターP。
でも、ある日とつぜんスーツケースを出してきた。どうして?
2019年8月3日(村井由岐子)