♪かかと ととと ととと かかと♪
タスケさんはいつもボロボロの靴を直していました。「今ごろ新しい靴の注文なんてないからね」と言いながら、大きなお店で修業していたとき、赤いハイヒールを作ったことをうれしそうに話してくれました。
「私も赤い靴がほしい」、女の子はお父さんに「一生のお願い!」とたのみました。やわらかい皮でぱちんどめの赤い靴ができました。足にぴったりの靴をはいて女の子はタスケさんとダンスをしました。かかと ととと ととと…。
でもある日、タスケさんは兵隊さんになるためにお店を閉めました。その町に空襲があったのは、まもなくのことです。
このお話の作者角野栄子さんは『魔女の宅急便』を書いた方ですが、こどもの頃はずっと戦争だったそうです。そんなときに「一生のお願い!」と赤い靴をほしがる女の子って角野さんだったかもしれませんね。
2020年8月7日(大原寿美)