英米怪奇小説はいかが?
冷たい雨の降る寒い夜、ホワイト家にひとりのお客がやってきます。世界各国を旅したモリス氏がポケットからとりだしたのは猿の手。ひからびて、ミイラのよう。三人の人間が三つずつ願いをかなえられるのだと話します。モリス氏が“こんな不吉なもの”と暖炉に放り込んだ猿の手を、ホワイト氏は拾い出します。願いをかけると猿の手はへびのように手の中でするっとよじれ……。
表題作「猿の手」をはじめ、この本に収められた「不思議な下宿人」「魔法の店」の三作品は英米の怪奇小説として人気のある作品です。この本は児童文学者の富安陽子さんによって読みやすく書かれたもので、挿絵の幻想的な世界感も加わり、翻訳されたものと同じ読後感を味わえます。興味をもったら翻訳本や原書に挑戦してみるのもよし。外国文学への入り口としておすすめの一冊です。
2024年7月12日(辻恵子)