ロバは大切なことを教えてくれました。
ひんやりした春のある朝、海に近い森の中で、姉のマルセルと妹のココは、たおれている男の人を見つけました。死んでしまっているのかと思ったその人は、目の見えない兵隊さんで、名前はシェパード・チューイと言いました。戦争に行っていたけれど、病気の弟に会うために、ふるさとの国に帰ろうとしていたのです。しかし、目が見えなくなり、食べ物もなくなり、森の中でこまっていました。兵隊さんは弟からもらった小さな銀のロバを大切に持っていて、ロバが出てくるふしぎな物語をお話してくれました。
女の子たちは兵隊さんをこっそり助けることにしました。森の中のひそやかな冒険が始まります。はたして、女の子たちは兵隊さんをふるさとに帰すことはできるのでしょうか。第一次世界大戦中のフランスを舞台に、人にとってかけがえのないものについて、深く静かに、そして生き生きと語りかける本です。
2020年11月20日(小松直子)