地下鉄は、物語を乗せて今日も走る
表紙は、淡い色調で描かれている見慣れた列車の中の様子。表紙をめくると、大きな川を渡る列車が小さく描かれ、ページをめくっていくと、駅のエスカレーター、改札そしてホームへと。暗い地下の線路を走ってきた列車が到着して、たくさんの人と一緒に列車に乗り込みます。韓国の大都会ソウルの地下鉄の風景です。
その地下鉄がこの本の語り手です。地下鉄は語ります。毎日、たくさんの人を、たくさんの人の物語を乗せて走っているのだと。走って飛び込んできたサラリーマン、うつむいて座る少女、大きな荷物を大事に抱えている中年の女の人、などなど、たまたま隣り合わせた人々の生活や心の内を地下鉄は語ってくれます。それぞれの人が、かけがえのない生活を送っていて、それぞれの思いを抱きながら自分の物語を一生懸命生きていることを、地下鉄は教えてくれます。
2024年9月6日(雨宮智子)