あたたかいパンの香り
イギリスのはしっこにある海辺の小さな村。村の人はだれもが海のそばでいっしょうけんめい働いている。漁師だけでなく、船大工、あみ職人、いろんな職人が寒さと雨の中で働いている。ぼくも嵐とたたかい魚をつかまえる漁師になりたい。
ぼくのとうさんはパン屋だ。パンやあまいバンズを焼くあたたかなにおいの中で一日が始まる。どうしてとうさんは「パン屋」なんだろう。「パン屋になったのは、パン屋になりたかったからだよ」と言った。
パン屋はきびしい自然とたたかう村の人にとって、なくてはならない大事な仕事だ。やきたてのパンはつかれて海から帰ってきた人、これから海へむかう人のからだや心をあたためてくれる。ぼくは夜明け前から働くとうさんの仕事を手伝いながら、ほこらしくなってきた。
2024年7月19日(村井由岐子)